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斬る

1968年、東宝、山本周五郎「砦山の十七日」原案、村尾昭脚本、岡本喜八脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

天保4年、上州のとある宿場に、空腹を抱えた浪人ものが到着する。

藩で浪人を集めているという噂を聞いてきたらしい田畑半二郎(高橋悦史)と名乗るその男は、同じく腹を空かせたヤクザもの源太(仲代達矢)と、女主人が首を括って廃虚となった飯屋の前で出会う。

そんな彼らの目の前で、長年の腐敗政治の元凶として、城代家老溝口佐仲(香川良介)が、笈川哲太郎(中村敦夫)、庄田孫兵衛(中丸忠雄)ら血気に逸った7名の若侍から暗殺されてしまう。

そんな7人を、鮎沢多宮(神山繁)は、逆賊として討伐すべく、荒尾十郎太(岸田森)を隊長とする浪人たちを討手として集める。

侍になるチャンスとばかり、それに参加する田畑。
彼は、もともと農民なのだった。

一方、自分達の行動が藩に理解されなかったと察した7人の若侍たちは、頂上に砦のある砦山に籠り、江戸の殿への直訴へ向う同士、松尾新六(土屋嘉男)の帰りを待つのだったが、実はその松尾は鮎沢多宮と裏で通じており、江戸へ向う気などなかった。

さらに、田宮は、討手の浪人たちも、若侍諸共、全員、射殺するつもりであった。

面倒な事に、哲太郎の婚約者である千乃(星由里子)が、彼の身を案じて単身山へ登ってしまい、彼女に気のあるものも混ざった若侍たちグループに合流してしまう。

そうした動きを、身を寄せていた真法寺で冷静に観察していた男があった。

源太である。

何を隠そう、実は彼は、元武士であったのだった。

罠にハマった人間たちを助けるため、彼も又、砦へと向う…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

多宮に軟禁される藩の重鎮、森内兵庫に東野英治郎、多宮の息子金三郎に黒部進、屈折した侍島田源太夫に天本英世、女郎屋に身を落としている荒尾の妻に田村奈巳、若侍には久保明、地井武男、橋本功らと…顔ぶれも多彩で、「七人の侍」と「隠し砦の三悪人」と「用心棒」をミックスしたような設定も面白い…はずなのだが、今一つ、傑作になりきっていない観がある。

どこか飄々とした源太や田畑、真法寺の住職、はたまた森内兵庫といった連中と、神経質そうな荒尾や多宮、さらに若侍たちといったキャラクターの対比なども面白いし、徐々に盛り上がる緊張感の中にユーモア表現をさり気なく配する辺り、手練の岡本監督らしい。

白黒映像も雰囲気満点なのだが、面白くしようと、若干、要素を増やし過ぎたような感じもしないではない。

砦に追い詰められた若者たちを助ける異色のヒーロー二人(田畑&源太)…という骨格はシンプルなのに、それに附随するサブストーリーや人物描写が多すぎて、途中でちょっとピントがぼけて来るというか、だれてくる感じがあるのだ。

荒尾十郎太のドラマはともかく、島田源太夫など、どういう人物なのか、今一つ掴みきれない恨みもある。

又、山の頂上でのアクションというのも、若干、爽快感や拡がりに欠ける感じもする。

そうはいっても、娯楽時代劇としては十分楽しめる作品である事は間違いない。